施工図はどうして必要なのか?

設計図は完成図

住宅やテナントを作る際の図面として一番ポピュラーなのは、やはり設計図です。しかし、実際に現場で作業をする職人さんは、設計図だけでは仕事ができないと感じることも多々あります。というのも、設計図はあくまでも完成した建物の状態を示すものであり、細かな点については記載されていないこともあるからです。仕上がりのイメージをするのには重要な設計図ではありますが、作業をする際の詳細が不足しているため、それだけでは正確な仕事ができない可能性もあるのです。

そこで、施工図が必要となります。施工図は設計生産と呼ばれるプロセスが必要となってきます。これは、仕上がりを示す設計図から、現場での作業に必要な詳細説明を作り上げる作業です。ここで作られるのが施工図ということになります。つまり、施工図は施工をする職人さんたちへの仕様書もしくはマニュアルとしての機能を果たすわけです。

職人さんは施工図を確認しながら仕事をする

施工図に記載されているものとしては、それぞれの構造や家具などの寸法や納め方、使用する材料の指定などの情報を挙げることができます。詳細な情報が記載されることで、どの材料を使ってどのように作業をしたら良いかがはっきりするのです。逆に言うと、施工図がない状態では、職人さんは設計図だけを頼りに自分たちの判断で作業をしなければならなくなってしまいます。もちろん、スキルの高い職人さんであればしっかりとした仕上がりにしてくれますが、作業をする人によってバラツキが出てしまう恐れがあります。また、見た目上は良くできているように見えるものの、構造がきちんとしていなかったり、本来使うべき材料が使われない恐れもあります。また、他の部分との納まりが悪くなり、家具や設備をきちんと取り付けるのが難しくなったり、機能が制限されてしまったりすることもあります。

このように、施工図は設計者や施主様のイメージや意図を正確に汲み取って施工するために重要なものなのです。特に、アパートやマンションなど、複数の部屋を同じような仕上がりにする場合、部屋によって仕上がりの違いが出てくることを防げるようにもなります。現場で働く職人さんたちの仕事は繊細なものですので、細かな点までしっかりと施工図にして示してあげることで、均一な仕上がりになるというのがメリットなのです。

施工図により効率的な作業ができる

設計図にもたくさんの情報が記載されていますが、施工図にはさらにたくさんの詳細な情報が書かれています。特に寸法についての情報は細かく、すべての部分について記載されています。たとえば、据え付け家具を設置する場合には、縦横高さという全体の寸法だけでなく、材料の厚みや棚の間隔、それぞれのパーツの長さなどの寸法がすべて記されています。そのため、大工さんは施工図を見て、その通りに作業を進めるだけで済みます。一方で施工図がなく、全体の寸法が記されている設計図だけであれば、大工さんは作業に入る前に、いろいろと考えるべきことが出てきます。自分たちで、用意されている材料の厚みなどを測り、それを基にそれぞれのパーツの大きさを決める必要があります。また、縦と横のパーツのどちらで固定するのかなども、自分で仕上がりをイメージして決めることになります。それだけ、作業の時間がかかってします。このように、施工図があると、現場の職人さんはより効率よく仕事ができるようになるのです。考える手間がかなり省けますし、不明点についてイチイチ担当者に尋ねることも少なくなります。こうすることで、現場の負担を減らすと共に、全体の工期を短縮することにもつながるわけです。

メンテナンスの際にも役立つ施工図

建設現場では、大工や電気工事士、配管工などいろいろな職人さんが入って、それぞれの分野で仕事をします。そして、それぞれの専門工事のために作られた施工図が存在します。どの分野においても、作業員は施工図通りに仕上げていきますので、後に施工図を見ればどんな工事をしたのかが一目瞭然です。中には、電気配線や上下水道の配管など、壁の中に入っていて外からでは見えないものもあります。なんらかのトラブルが生じた時や、メンテナンスをしたい時に、施工図があれば手を付けるべき位置をより正確に把握できるようになります。施工図を見ながらチェックをしたり、修繕工事をするための穴を開けたりできるわけです。もし、こうした施工図がなければ、余計な調査作業をする必要が出てきたリ、無駄に壁に穴を開けてしまったりすることも出てきます。

このように、施工図はメンテナンスについてもメリットがあります。新築の際に作業を効率よく進めるだけでなく、その後ずっと役に立つものですので、設計図と共に施工図もしっかりと保管しておくべき理由はそこにあるのです。建造物を良い状態のまま保つためにも、施工図というのは重要な役割を担っているわけです。