施工図屋の役割とは?

施工図屋とは?

施工図屋とは、建設現場で使われる施工図を作る専門家のことです。建物を建設する際には、いろいろな種類の図面が必要となります。図面と言うと、真っ先に浮かぶのは設計図です。設計図は設計士が作成しますが、これはあくまでも建物の完成イメージを記すようなものです。そのため、設計図だけでは建設作業をすることはできません。建物の形状や仕上がりのデザインなどは分かりますが、細かな作業の仕方は設計図には記載されていないからです。また、どこにドアや窓が取り付けられるのは分かるものの、具体的な寸法や使われる資材の内容などの情報はありません。設計図をさらに詳細にした施工図を作って、現場で実際にどのように作業をしたら良いかを指示することが求められるのです。

こうしたことから、施工図とは設計士と現場で作業をする業者とをつなぐ役割を果たすと言うことができるでしょう。設計士が持つ完成イメージをしっかりと把握しながら、実際に施工をする職人さんたちが理解できるように、どこも同じような仕上がりになるように、作業指示を作っていくのです。また、現場で作業を始めると、その時々の状況によって変更を加えないといけない場面が出てきます。こうした時に、現場と設計士がいきなり話し合うというよりも、施工図屋が間に入って、具体的な修正をどのようにしていったら良いかを考える必要が生まれるケースもあります。単に図面を描くだけでなく、スムーズに設計から施工ができるように橋渡しをするのが、施工図屋の仕事ということになります。

深い建築に関する知識がないと施工図屋はできない

こうして見てきたように、施工図屋というのは、設計図を引くことができれば仕事になるわけではありません。現場でどのように作業が進められているかを理解していないと、具体的かつ正確な指示ができないからです。また、設計図ではどんな資材を使うかという指定がなされていない部分も多くあるものです。そこで、施工図屋が施工に必要な資材を指定したり、納め方を指示したりします。そのため、資材としてどんなものが使えるかという、幅広い情報を得ていることが求められますし、それぞれの資材をどのような工法で取り付けるのかということまで知っていないといけないのです。施工図屋は建築そのものついての深く広い知識がないと務まりません。

こうしたことから、施工図屋の多くは、オフィスの中で座って図面描きという作業をするだけでなく、現場に赴いて確認することも多いです。現場ではどのようなやり方で工事を進めているのか、それぞれの資材だとどんな仕上がりになるのなどを自分の目でチェックするためです。こうした現場での勉強がないと、図面としては体裁が整っているものの、実際にそれを見て作業をする人からは評価されないという出来になってしまうのです。

施工図屋によって得意分野を持っていることが多い

設計図は建物全体のイメージを示していますが、施工図は詳細な工事のやり方を示す情報を記載することになります。そのため、一般住宅などの小さめの建物ならともかく、大型の施設や特殊な工場などの建設では、施工図の種類と量がかなり多くなります。こうなると、すべての種類の施工図を一人もしくは一つの会社で仕上げるのが難しくなることが多いです。また、施工図屋にも得意な分野とそうでない分野があります。たとえば、コンクリート躯体図などの構造に関わる図面を引くのが得意なものの、外構や配線に関わる図面は経験が少ないといったこともあるので、特に小さめの会社であれば、すべての施工図を請け負うのではなく、種類を絞って受注しています。とは言え、すべての施工図を担当できないからといって、その事務所のレベルが低いということではありません。むしろ、特定の分野に絞って施工図を描いていますので、より的確で使いやすい図面を作ってくれる可能性が高いとも言えます。

発注元の違いもあります。ゼネコンなどの規模が大きなプロジェクトを扱う会社を中心に仕事を受けている施工図屋もいますが、地域の工務店といった比較的小さめの会社を相手にしているところもあります。さらに、ショッピングセンターの図面作成をメインとしているところや、製造工場の図面が得意というところもあります。中には、特殊な機器やプラントのような施設を専門にしている事務所もあって、それぞれの施工図屋のこだわりが見られるのも特徴です。そのため、施工図を依頼したい場合には、自分たちが手がける建設現場の規模や種類を基にして、それに見合った施工図屋を選ぶことが大事です。また、施工図屋は設計士と現場の橋渡しをする役割も果たしますので、コミュニケーションが取りやすいかどうかということも考えると、工事がスムーズになります。施工図屋は工事の成功に影響する大事なカギですので、こうしたことも検討しましょう。